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ORORU

ORORU
ORORU
ステンレスの可能性を広げる

オロル株式会社

ステンレスといえば銀色のイメージが一般的だが、色を付けることも可能だ。ひとつは焼付け塗装で着色する方法。技術的には難しくないが、傷などによって剥げるという欠点がある。

もうひとつは、ステンレスの表面を覆う酸化被膜の厚さを変化させると、光の反射によって異なる色が現れる“干渉色”という現象を利用する方法。お湯を沸かした後に乾かしたステンレス鍋の内底が、虹色に見えるのも同じ原理だ。こちらの方法だと色が剥げることはなく、酸化被膜を厚くすることで耐食性も向上するという利点もある。

とはいえ、干渉色による発色技術は難易度が高い。酸化被膜の厚さをナノメートル単位で正確に制御しなくてはならず、従来は平面状のステンレスのみといった限られた条件下でしか実用化できなかった。この常識を覆したのが、鳥取市にあるオロル株式会社である。
カラフルなステンレスは、 活躍の用途も無限大
「酸化被膜の厚さを緻密にコントロールし均一化することで、従来の技術では色ムラが出たり、ロット間に色のバラツキが生じたりする欠点の改善に成功。色調を均一化する技術が認められ、国内外で特許も取得しました。当社では20数色を表現することができ、これまでは不可能だった複雑な形状にも色を付けることができます」と語る、代表取締役社長の木下淳之氏。
ORORU

アサヒメッキでの経験を積んだ後オロルを設立した木下氏。現在はアサヒメッキの代表取締役社長も兼ねる。

木下氏はこのステンレス発色技術をORORU(オロル)と命名し、2018年に同名の会社を設立した。現在は、光沢ありのORORU Ⅰ、半光沢のORORU Ⅱ、光沢なしのORORU Ⅲ、半光沢で指紋がつきにくいORORU Ⅳという4種類を展開している。このうちORORU Ⅱ~Ⅳは世界初の技術であり、デザイン性に加え機能性の高さも注目を集めている。

「ORORUの特徴は多彩な色を表現できることですが、それだけではありません。耐食性が大幅にアップし、鳥取県産業技術センターのデータの分析では、金属アレルギーが低減されることも判明しました。建築・インテリア、医療、自動車、レジャーなどのさまざまな産業での活用が進んでおり、今後は装飾的な意味合いに機能的な要素を加味した用途も期待できます。耐摩耗性にも優れているため、たとえばキッチンのシンクに施せば、食器やガラス製品が割れてもシンクの傷つきを防ぐことができます」

鳥取の一企業が、これだけの技術開発を成し遂げられたのには理由がある。関連会社であるアサヒメッキは戦後まもなく創業した表面処理会社の老舗。木下氏は同社で経験を積み、2013年に毒物を一切使わないアルマイト処理の技術開発に成功し特許を取得した。それに伴い、国の補助金制度である中小企業庁の戦略的基盤技術高度化支援事業(通称サポイン制度)に採択されたのだ。この技術は後に「第7回ものづくり日本大賞中国経済産業局長賞」や「発明協会会長賞」を受賞し、環境意識の高い欧州から注目されるきっかけにもなった。
さらなる独自技術の開発を目指した木下氏は、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の中堅・中小企業への橋渡し研究開発促進事業の公募で採択を勝ち取る。かつて長年にわたり議員秘書を務めた際の人脈を活かし、表面処理に関する第一人者や見識者を訪ねて協力を仰いだ。

「国の補助金を活用し、日本を代表する多くの方たちの叡智を集結させることで、世界初のステンレス発色技術を開発することができました。もともとこのプロジェクトは、若い頃に世界中の街を旅行した際に、どこに行ってもステンレスといえば銀色ばかりで味気ないと感じたのがきっかけでした。コモディティ化からの脱却として、新しい価値を創造することができればと思ったのです」
水素バリア膜の実用化で、 脱炭素社会の実現を目指す
ORORU
現在、オロルは次のステージに向けて、水素ガスのステンレス配管や燃料電池に使われる水素貯蔵用の圧力容器、船舶のバラストタンク用浄化槽などを保護する水素バリア膜の研究開発に取り組んでいる。

水素を扱う現場では、水素脆化(ぜいか)という問題がある。もっとも小さな原子である水素原子が金属の中に侵入し、それによって粘り強さが低下した金属がもろくなり割れてしまう現象を指す。

「弊社が培ってきた表面処理技術でステンレスの管やタンク内部を覆い、水素脆化を抑制することで安全な水素社会の貢献につながることを目指しています。水素バリアの権威や大学教授、産業技術総合研究所、鳥取県産業技術センターに加え、大手企業が参画。現状は良い結果が出ており、2019年にアメリカ機械学会(ASME)で発表したプロシーディングも高い評価をいただきました」

ステンレスにもさまざまな種類があり、世界中でもっとも利用されているのがSUS304だ。水素脆化が比較的起こりにくく、燃料電池などに使われるハイグレード素材がSUS316L。開発中の技術をSUS304に施した場合、SUS316Lと同等以上のレベルでの水素脆化の抑制が期待できるという。
「実用化に向けての当面の目標は、ステンレス管の溶接部分の内側を水素バリア膜で覆うこと。その作業を現場で行うことを想定し、当日の気温や湿度に応じてどのように作業を行えばいいのかを指示できるアプリのようなシステムの開発も進めています」

燃料電池自動車などに利用され、次世代エネルギーとして有力視されている水素。水素バリア膜が実用化されれば、オロルは脱炭素社会の実現に貢献する企業として、さらなる注目を集めることになるだろう。
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INTERVIEW
木下淳之さん
INTERVIEW
オロル株式会社 代表取締役社長 木下淳之さん
1967年、鳥取県生まれ。1993年湘南工科大情報工学科卒業後、衆議院議員秘書に。2011年株式会社アサヒメッキ入社。2012年専務就任。2018年オロル株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。2020年6月1日株式会社アサヒメッキ代表取締役社長に就任。

※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。


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