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EOS Rシステム

EOS Rシステム
EOS Rシステム
光学の可能性を広げるシステム

キヤノン株式会社

2018年9月に登場した、キヤノン初のフルサイズミラーレスカメラ「EOS(イオス) R」。新設計のRFマウントを軸としたシステムの導入は、30年以上の歴史を持つEOSブランドにもたらされた大きな変革と言える。その開発が意図するものとは何か。
光学設計の自由度が増し、さらなる高画質化が可能に。
“快速・快適”のコンセプトを掲げ、1987年に誕生した、キヤノンのレンズ交換式AF一眼レフカメラ、EOS(イオス)。従来のFDマウントに代わって採用されたEFマウントシステムは、レンズに内蔵したモーターにAFおよび絞りの制御を行わせ、レンズとボディ間の一切の機械的な連動機構を排して電気信号のみでやりとりするという画期的なものだった。以来30年、デジタル化以降はコンセプトに“高画質”を加えて業界を牽引し、多くのユーザーに愛されてきた。
キヤノン株式会社 下丸子本社

キヤノン株式会社 下丸子本社

この歴史を踏まえ、さらなる進化を図るべく生まれたのが「EOS Rシステム」だ。新開発のRFマウントは、EFマウント同様にマウント内径を54mmの大口径としつつ、ミラーレス構造の採用によってショートバックフォーカス(最後部のレンズ面の頂点からセンサーまでの距離が短いこと)を実現。

「CMOSセンサー直前までレンズを配置できるので、光学設計の自由度が増し、高画質化が行いやすくなりました」と語る、キヤノン株式会社イメージコミュニケーション事業本部長の戸倉剛さん。また、キヤノン独自のAF技術「デュアルピクセルCMOS AF」等により、撮影時の明るさがEV−6という肉眼では視認しづらい状態でも、ピントが合わせられるようになった。「AFに対するレンズ側の制約も緩和され、これまでよりF値が大きいレンズでもAFが利くようになったのも大きな進歩です」
そして電子接点の数も8ピンのEFマウントに対し12点となり、より多くの情報を高速で、ほぼリアルタイムに通信することを可能にした。新マウント通信システムによって、RFレンズには絞りやシャッタースピード、ISO感度、露出補正等を任意で割り当てられるコントロールリングが備わった。カメラはレンズを制御しつつ、同時にリング操作による設定変更にも対応できる。一方で、中身は大きく変えつつも、手に持った時の感触や操作性にはEOSらしさが継承されている。
「コンパクト化が可能なミラーレスですが、闇雲に小さくはしません。コンセプトの“快適”にはホールド感や操作性も含まれます。特にグリップのデザインにはこだわりがあります」

また継承といえば、専用マウントアダプターを装着することでこれまでのEFレンズが使えるというのも特筆すべき点だろう。
「EFレンズユーザーがこれまでのEFレンズという資産を失うことがないようにしたかった。しかしながら、単にEFレンズが使えるというだけではおもしろくないし、より付加価値をつけるべきだと考えていましたので、アダプターにコントロールリングやドロップインフィルターが付いたバリエーションも用意して、従来のEFレンズ以上の使い方ができるようにしています」
キヤノンの次の30年を支えていく存在になる。
EOSの歴史上、かつてない変革を行った理由は何か。「まずは世の中の流れとして、フルサイズのレンズ交換式カメラにもダウンサイジングが求められているということがありました」と語る、戸倉さん。ミラーレス化は、ダウンサイズを進めるためのひとつの手法であったが、もっと早く出すことも可能だったと言う。
開発中の「EOS R5」

開発中の「EOS R5」

「2007年ごろから一部機種にはライブビュー撮影機能を搭載していましたが、これはミラーアップ状態ではミラーレスと同じ。そこから光学ファインダー機構を取り除くだけでミラーレスカメラを作ることもできました。しかしミラーレス化の最大のメリットは光学設計の自由度が増すことですから、やるならばそこを追求し、EFレンズ以上の光学的ポテンシャルを持たせたい。そのためにはシステム全体を変える必要がありました」

そしてデバイスや光学、生産技術などが進化し、理想を追求するための条件が整った時点で開発はスタートされた。新設計のシステムだけに、どう作りあげ、まとめるか。規格を詰めていく過程に多くの時間が費やされた。しかし開発に携わったスタッフのモチベーションは一貫して高かったと言う。
「これまでの後継というよりは、まったくの新システム。EFマウントシステムからの制約からある意味解き放たれ、自由に作ることができる。ゼロからの設計なのでもちろん苦労もありますが、それよりもおもしろいことができるというやりがいが勝っていた。規格をとりまとめる際にはレンズ、ボディ、デバイスの各担当とのせめぎ合いがありますが、やりとりの熱が違いました」

戸倉さんは、2020年をひとつのマイルストーンと位置づける。「今年からEOS Rシステムの本格的な普及が始まります」。その強力な武器となるのが、2月に開発が発表された「EOS R5」だ。新開発のフルサイズCMOSセンサーを搭載し、最高で秒速約20コマの連写性能、8K動画撮影の対応、ボディ内手ブレ補正機能を備えた同モデルは、オリンピックに臨むプロカメラマンのサブ機としての需要を見込み、開催前の投入を目指している。
「一眼レフの5Dクラスに相当するポテンシャルを持ち、性能的には凌駕している部分も多くあります。それゆえの“5”です」
現時点では光学ファインダーに劣る面もあるEVF(電子ビューファインダー)だが、性能的に極限に近づいている光学ファインダーに対して、まだ進化の余地があり、いずれは凌駕していくと言う。“1”を冠したフラッグシップもいずれ登場するだろう。キヤノンの次の30年を支える存在となるべく生まれた「EOS Rシステム」のさらなる進化に期待したい。
#EpisodeEOS Rシステム
INTERVIEW
戸倉剛さん
INTERVIEW
キヤノン株式会社 イメージコミュニケーション事業本部長 戸倉剛さん
1982年の入社以来、EOS-1系のプロフェッショナル一眼レフカメラから、EOS Kissデジタルなどの普及型一眼レフ、さらにはEOS Mシリーズまで、さまざまなカメラ開発に携わる。「EOS Rシステム」においてはイメージコミュニケーション事業本部長として陣頭指揮を執った。
https://canon.jp/

※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。


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