#Episode
おもいのフライパン
フライパンが紡ぐ物語
石川鋳造株式会社
社員のアイデアから始まった、鋳物による調理器具の開発
そんな矢先、先行する同業の社長と会う機会を得た石川氏は、単刀直入に尋ねた。「御社の商品は輸入モノの類似品じゃないですか?」と。返ってきた答えは意外なものだった。「似ていることは分かっている、と。一方で、これは自分たちの特性である精密加工を駆使したメイドインジャパンの商品で、他社商品とは全く異なる。そう言い切ったのです。その言葉で迷いが吹っ飛びました」
ここから、自分たちが本当に世に届けたい商品とは何なのかを突き詰めていくことになるのだが、商品を絞り込む際、そのヒントになったのは、石川氏の少年時代の原体験だ。「肉を食べることが大好きなのですが、子どもの頃は母の焼く肉がおいしくなかった(笑)。飲食店で食べる肉に比べると水っぽい。当時はプロと素人の技術の差だと思っていましたが、実は調理器具に秘密があったのです」
石川氏が馴染みの鉄板焼き店の協力を得て調べたところ、その店の鉄板には相当な厚みがあった。うまさの秘訣はこれだと確信し、自社のフライパンは圧倒的な厚みを持たせることに決めた。しかし、そこでネックになるのが重さである。開発当時の主流は、厚さ1.5ミリ程度。重量1キロを切る薄型軽量のフライパンだった。
焼き面を厚くすると、重量が増す。相反する課題を解決するため、試行錯誤が始まった。取っ手の形や角度によって、感じる重みは異なる。形状の研究を重ね、取っ手に穴をあけることで、遂に軽量化を実現した。苦心の末に完成した、新商品の名前は「おもいのフライパン」。軽量化したとはいえ、他社製品に比べれば重い。そのハンデを逆手にとったネーミングは、石川氏と社員の思いをずっしり込めたものだった。
熟練の鋳物職人が実現する、 安全安心なモノづくり
幼い頃から夢見ていたものを、今回の商品開発を通して実現した石川氏。これからも様々な人たちと繋がることで、その夢はさらに大きく膨らんでいくことだろう。
#Episodeおもいのフライパン
INTERVIEW
INTERVIEW
石川鋳造株式会社 代表取締役社長 石川鋼逸さん
愛知県出身。1938年創業の老舗鋳物屋である石川鋳造に2004年、社長就任。2008年よりフライパンプロジェクトをスタートし、2017年「おもいのフライパン」発売。現在は「おもいのフライパン」プロジェクトの先頭に立ち、YouTube動画「おもいのフライパン【公式】」チャンネルに出演し、お肉にまつわるさまざまな知識を配信中。チャンネルは毎週水曜夜更新。
https://omo-pan.net/
※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。