#Episode
ヒューマンサポート


“持続可能な介護保険制度を”
株式会社日本ヒューマンサポート
一方で、介護の現状はどうか。厚生労働省の介護保険事業状況報告(令和2年9月分)によると、要介護(要支援)認定者数は676万人となっており、こちらも増加傾向にある。
高齢化社会における介護のニーズは高まるばかりだが、民間企業の経営者として、良質な介護サービスを追求するだけでなく、業界全体を巻き込み、社会変革に挑む日本ヒューマンサポート代表取締役の久野義博氏に話を聞いた。
ケアミックスの発想から、 新たなサービスが生まれる。

2020年9月、埼玉県桶川市にオープンした施設にて、介護保険制度について語る久野義博氏
「利用者と、ケアサービスに従事する職員。どちらにとっても満足できる場をつくりたいと思って、頑張ってきました」と語る久野氏。同社の課題の一つでもある人材難については、業界全体の問題として捉える必要があるという。
あるべき社会の実現に向けて、 業界全体として取り組む。

桶川施設の外観写真
離職率が高い理由は、介護の仕事が想像以上のハードワークであることに加えて、その報酬が労働に見合っていないと考える人が多いからではないかと久野氏は考えている。
「国税庁が今年9月に発表した民間給与実態調査によると、全業種の平均年収は436万円。一方で、介護業のそれは約361万円(厚生労働省平成30年度介護従事者処遇状況など調査結果の概要より年収を算出)です。開きを生んでいる要因ですが、95年から始まった介護保険法の制度設計の段階で、介護サービス従事者の多くをパートタイマーと想定していたのか。あるいは、これほど急速に高齢化が進むと予測できなかったからだと私は思います」
事業所の売上、ひいては従業員の給与の元となるのは介護報酬だが、サービスの種類ごとに内容や要介護度などに応じて支払われる額が定められている。利用者が所得に応じて1~3割を負担し、残りを自治体が介護給付として事業所に支払う仕組みだ。介護報酬は3年、介護保険法は5年ごとに改定されるので、介護事業は政策に大きく左右される。しかし、これまでの介護関連の各団体は個別に陳情や要望を提出するのみで、業界全体として政府に働きかけることができずにいた。
そうした思いから久野氏らが中心となって2018年に設立したのが、一般社団法人全国介護事業者連盟。介護関連のあらゆる事業者が無料で入会できるこの連盟には、すでに約7千の事業所が加盟している。翌年には政策の提言を行う全国介護事業者政治連盟も設立し、会長として、さまざまな要望書を政府に提出してきた。
「要望書提出だけでなく、補正予算の策定に際しては知恵を出させていただき、とりまとめのお手伝いもしました」
政権移行後、すでに菅総理大臣の元を訪れ、介護現場の窮状と課題について報告し、理解と支援を求めている。これらの活動によって持続可能な介護保険制度の実現を目指すとともに、久野氏はその先の未来まで想いを巡らせている。
企業の枠を超えてより良い介護業界、社会を目指す久野氏の今後の活動を見守りたい。
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INTERVIEW

INTERVIEW
株式会社日本ヒューマンサポート 代表取締役 久野義博
1963年、埼玉県生まれ。外資系企業、国会議員秘書、コンサルタント会社などを経て2004年株式会社日本ヒューマンサポート代表取締役就任。2018年 一般社団法人全国介護事業連合会副理事長および関東支部長就任。2019年全国介護事業者政治連盟会長就任。
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