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カップヌードル

カップヌードル
カップヌードル
世界的ファーストフード進化論

日清食品株式会社

2020年、発売から49年を迎える日清食品の「カップヌードル」は、世界累計販売数450億食を突破。その数からもわかる通り、名実ともに日本を代表する即席麺のグローバルブランドとして今も人々に愛され続けている。日清食品株式会社の伝統と進化を体現するカップヌードルの歴史に刻まれた、ブランド確立に至るまでの軌跡を辿った。
試行錯誤を繰り返し、食習慣の壁を越えるために
高度経済成長の真只中、1958年に創業した日清食品株式会社。唯一無二の主力商品として爆発的ヒットを遂げていた「チキンラーメン」とともに、同社は大きな成長を続けていた。しかし、即席麺市場に他メーカーが数多く参入し始め、60年代半ばから市場は飽和状態となる。
カップヌードル

日清食品の創業者・安藤百福

「それを機に、創業者の安藤百福は海外市場の開拓に踏み出すべく、欧米へ視察旅行に出かけました」
そう話すのは、カップヌードルのブランドマネージャーを務める白澤勉さん。

しかし、チキンラーメンを持参して現地のスーパーを訪れた際、試食してもらおうにも箸や丼ぶりがない。その時、現地のバイヤーがチキンラーメンを小さく割って紙コップに入れ、お湯を注ぎフォークで食べ始めた。この光景がカップに入れてフォークで食べる即席麺、カップヌードル開発のヒントになったのだという。

「安藤百福は、チキンラーメンのおいしさに絶対の自信を持っていましたが、食習慣の壁を越えなければ世界で売れる商品にはならないことに気づきます。それが1966年のことでした」

そこから試行錯誤を重ね、発売に漕ぎ着けたのは約5年後の1971年9月のこと。カップが商品のパッケージとなり、お鍋の代わりの調理器にもなる。そして食べる時の食器にもなり、一つのカップが3役をこなす。まさに前代未聞。他にも数多くの工夫とアイデアが詰まった「知恵のかたまり」と呼ばれる世界初のカップ麺が登場したのだ。
発売当時、カップヌードルの価格は100円。当時の袋麺の実勢売価が25円前後であったことを考慮すると、決して安いとは言えない価格設定だった。そのため各問屋は取り扱いに二の足を踏む状況が続き、同社は新たな販売ルートを開拓していくこととなる。

1971年にはお湯が出る自動販売機を開発し、72年には全国で2万台も設置された。これは当時、コカコーラの自動販売機に次ぐ2番目に多い台数だったという。

またプロモーションにも力を注いだ。「日本にも必ずファーストフードの時代が来るに違いない」と、若者たちが集まっていた銀座の歩行者天国で試食販売をスタート。多いときには一日に2万食を完売し、最先端のファッションに身を包んだ若者たちがカップヌードルを立ったまま食べる様子は、大いに注目を集めたた。

「ちょうど同じ時期に、銀座ではマクドナルド1号店がオープンしました。アメリカから入ってきたファーストフードと日本で生まれたファーストフードは1971年に銀座で出会い、若者を中心にその価値を浸透させていったんです」
環境面や健康面に配慮するのは、ブランドの使命
そしてカップヌードルの認知度を一気に上げるきっかけとなったのが、1972年2月に起きたあさま山荘事件だ。これは軽井沢の奥地で氷点下の寒さが続くなか、連合赤軍による人質立てこもりが何日も続いた歴史的事件。現場で対応にあたっていた警察官たちにはお弁当やおにぎりが配られたが、寒さで凍ってしまう始末だった。そのなかで、警視庁の機動隊員たちが、現場に持ち込んだカップヌードルを、雪の中で湯気をあげながら食べている様子がテレビに映し出された。テレビを観た人たちから「あの食べ物は何だ?」という問い合わせが殺到し、爆発的ヒットへと繋がっていったという。
カップヌードル

東京本社ビル1階のエントランスロビー

「その後、カップ麺はあっという間に大人気となり、袋麺とカップ麺の売り上げも逆転しました。そして現在まで、カップヌードルは即席麺市場において売り上げトップの座を一度も譲ったことはありません。当社にとっても誇るべきブランドであり、まさに大黒柱でもあるのです」

つまり、今年の9月に発売49周年を迎えるカップヌードルを超える商品は、未だに出ていないということ。同社では、「カップヌードルをぶっつぶせ」をスローガンに、社内でもカップヌードルをライバルとして商品開発にしのぎを削っている。
「ブランドマネージャーとしての役割は、代々受け継がれてきた伝統を守りつつも、新しさを追求していくことです。時代や環境も日々変化していますから、そうした様々な社会課題にも向き合いながら、恐れずに変化していくことが、カップヌードルというブランドの使命ではないかと考えています」

これまでもカップヌードルらしさを保ちながら、様々な環境問題に配慮した変化を続けてきたカップヌードル。例えば、カップは発売当時から発泡スチロール製を使用していたが、2008年から紙製に変更。19年12月からは、使用している石化由来のプラスチックの一部を植物由来のものに置き換えた「バイオマスECOカップ」への切り替えを開始し、21年末までにはカップヌードルブランド全商品のカップの切り替えを完了する予定だ。
「また減塩商品の開発にも積極的で、環境面だけでなく、栄養面や健康面への配慮を続けていくことも我々の使命です。実際、19年9月に発売した「カップヌードル ソルトオフ」は、カップヌードルとしての美味しさは担保しながらも30パーセントの減塩を実現しました」

世界を代表する巨大ブランドとして果敢に社会課題に向き合う姿勢は、私たち日本人にとって大きな誇りでもある。これからもカップヌードルは、発売当初から変わることのない「美味しさ」を世界中に届けていくために、さらなる挑戦を続けていくことだろう。
#Episodeカップヌードル
INTERVIEW
白澤勉さん
INTERVIEW
日清食品株式会社 マーケティング部 第1グループ
ブランドマネージャー
白澤勉さん
1997年日清食品入社。営業部門、宣伝部、経営戦略部、海外出向などを経て、2015年よりマーケティング部に異動。2019年1月より現職。「カップヌードル」ブランド全体のマネージメントを行う。
https://www.nissin.com/jp/

※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。


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