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新型実験台&ラボウェア

新型実験台&ラボウェア
新型実験台&ラボウェア
未来を変える、新しいラボ

オリエンタル技研工業株式会社

2019年の科学技術白書によると、主要な科学論文誌に掲載された論文のうち、日本の引用件数の国別順位は約10年前の4位から9位まで下がっている。また、研究者を目指して博士課程へと進む若者の数も、19年にはピーク時から半減となる約6千人まで下落した。

取り巻く環境は厳しいように思えるが、こうした現状を、画期的なアプローチで覆そうと試みる民間企業を紹介しよう。

オリエンタル技研工業株式会社は、研究設備機器の開発・製造から研究施設の建築設計やリノベーションまで、研究施設に関するあらゆるサービスをワンストップで提供する、ラボラトリーづくりのプロフェッショナルである。
デザインという視点で、 科学研究の世界を支えたい。
「私の考えでは、最先端であるはずの科学研究の世界が、日本では旧態依然としたカルチャーやムードに支配されているために、若い人にとって夢のない業界になってしまっている。それをラボから変えていきたい。研究で世の中を変えてやろうという気概をもち、新しいことに挑戦する日本の研究者を、想像力やひらめきを創出するラボづくりで支援するのが私たちの使命です」
すでに数社で採用されるオリジナルのラボウエア。クリエイティブディレクターを兼任する林氏が自らデザインした。

すでに数社で採用されるオリジナルのラボウエア。クリエイティブディレクターを兼任する林氏が自らデザインした。

そう話すのは、同社の代表取締役社長である林正剛氏。林氏はアメリカの美大を卒業後、広告制作会社勤務を経て父が経営するオリエンタル技研工業に入社。その後「設備だけでなく施設全体をプロデュースすることが、日本の研究環境の改善につながる」との想いから、建築の道に進み、のちに研究・開発施設に特化した一級建築士事務所プラナスを立ち上げた。

研究・開発施設のデザインでは、色彩や素材感、密度などの細部までを綿密に計算し、研究者の創造力をフルに刺激する空間設計を心掛けている。有名企業から大学まで数多くの研究・開発施設をトータルでプロデュースするなかで、林氏はなぜデザインに注目するようになったのか。

「ひらめきや発見につながる第六感は、視覚や触覚、聴覚などの五感をフル動員させた先に生まれるもの。実際に、海外で大きな成果を出しているラボでは、研究者がサーフボードなどの好きなものに囲まれて研究を行っていたり、100万円を超えるエスプレッソマシンが研究者の交流の中インスピレーションを促進していたり。常に何かが生まれそうな予感に満ちた環境がある。日本でも施設のなかで研究者がもっとも触れる機会の多い実験台や作業着を、もっと美しく機能的に、かつ五感を刺激するデザインにできるのではないかと考えたのです」
いまも日本の多くの研究室で見られるのは、グレーの実験台が並ぶ無機質な風景。そうした日本のラボを変えるため、林氏が父の会社を継いだことをきっかけに開発をスタートさせたのが、新型実験台“アダプタブルシリーズ”だ。

適応を意味する製品名の通り、天板や試薬棚は任意の高さに調整が可能。現代では研究テーマが頻繁に変更されることも多く、たとえば薬品を使った実験をするためのウェットなラボから、PCでの分析をメインとするドライなラボへの切り替えを要する場面も少なくない。一度設置すると簡単に動かせない従来の実験台では、そうしたケースで大掛かりな工事が必要となる。対してアダプタブル実験台なら自分たちで簡単に、テーマに合わせた快適な作業環境を実現できる。さらに、試薬棚の支柱部には、メモ書きのできるガラスボードの設置も可能。コロナ禍の感染症対策にも有効なうえ、向かい合わせた研究者同士のコミュニケーションにも貢献する。そうした機能面に加え、まるでデザイナーズ家具のような高いデザイン性もこの新型実験台の特徴だ。

「今後、AIやロボットが研究や実験に活用されるようになると、研究者に求められる役割はよりエモーショナルなものになっていくと思います。実験台も、研究者の感性に響くデザインであるべきだと考え、採用したのが温かみのある木目でした。素材の微妙な凹凸が光を拡散してくれるので目にも優しく、ラボ全体をカフェのように心地よい空間にしてくれます」
研究者へのリスペクトから、こだわりのウエアが生まれた。
林氏はさらに、研究者たちが日々まとうウエアのアップデートにも着手している。
挑戦、探求、心躍る。そんな想いをデザインに込めた新しい実験台 “Emotion”。
研究者が好きなものに囲まれ研究に没頭できる「愛着のもてるラボ」を目指している。

挑戦、探求、心躍る。そんな想いをデザインに込めた新しい実験台 “Emotion”。 研究者が好きなものに囲まれ研究に没頭できる「愛着のもてるラボ」を目指している。

「研究者という職業は、常に世の中を先導する、真にクリエイティブなものだと思います。それなのに、企業でも大学でも研究者が同じような作業着を着ていることに違和感がありました。優秀な人たちが、常に前向きで、クリエイティブなマインドをもち続けるために、ふさわしい服とはどんなデザインであるべきか。考え抜いた結果、生まれたのが、一般的な化学繊維ではなく環境に配慮した国産デニム生地を採用したラボウエアです」

火や熱を扱う作業に適した、料理人のためのシェフコートをベースとした遊び心のあるデザインで、いわゆる作業着のイメージとはかけ離れている。着心地もよく、耐熱・耐薬・耐火性にも優れるデニムは、経年変化による色落ちなど、着る者の個性を表現するのにうってつけの素材でもある。

実験台やラボウエアを通じて林氏が提案するのは、従来の研究室とは一線を画す“新しいサイエンシングスタイル”というカルチャーだ。そうしたカルチャーが普及した先にあるのは、わくわく感に満ちたラボで、研究者たちが創造性を存分に発揮して仕事をする、日本の科学研究の明るい未来。そんな風にラボが変われば、私たちの明日もきっと、より良く変わっていくだろう。
#Episode新型実験台&ラボウェア
INTERVIEW
林正剛さん
INTERVIEW
オリエンタル技研工業株式会社 代表取締役社長/CEOクリエイティブディレクター 林正剛さん
1972年生まれ。97年米美大グラフィックデザイン科卒業後、広告企画制作会社にて企業のCI/VI、広告制作に従事。のちにオリエンタル技研工業に入社。建築の道を志して米建築家Ken Kornberg氏に師事し、日本事務所を設立。2002年プラナス株式会社(旧オリエンタルサービスより改名)を設立し、同社代表取締役に就任。 2020年、オリエンタル技研工業株式会社 代表取締役社長に就任。日経ニューオフィス推進賞、中部建築賞、富山県建築賞、すかまち景観デザイン賞、DSA日本空間デザイン賞、他受賞多数。
https://www.orientalgiken.co.jp/

※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。


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