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溶射のオープンファクトリー

溶射のオープンファクトリー
溶射のオープンファクトリー
日本の溶射技術を
次世代に伝える新工場

株式会社シンコーメタリコン

創業は1933年と、溶射専門メーカーとしては日本でもっとも古い歴史を持つ株式会社シンコーメタリコン。溶射とは、金属やセラミックなどをさまざまな熱源を用いて溶融噴射し、基材表面に噴き付けて機能皮膜を形成する表面改質技術のこと。重工業部品から航空機、自動車のエンジン、半導体、人工骨まで、幅広い用途で使われる産業界では必須の技術だ。
代表取締役である立石豊氏は、祖父が創設した同社に入社し、その後に先代の父から経営を引き継いだ。90年以上に渡り培われてきた確固たる技術を基盤に、「人と地域を大切にする経営」で注目を集める経営者だ。
職場環境をとことん整備し
人を大切にする経営を実現
大阪芸術大学で映像制作を学び、卒業後は2ヶ月間インドを旅行し、その後は三越デパートの紳士服売り場に勤務。映画監督の庵野秀明氏ら才能溢れる同級生たちに囲まれて過ごした大学時代には、NHKのスタジオでのバイトに明け暮れ「家業を継ぐことは深く考えていなかった」と話す。
溶射のオープンファクトリー

現在の社員数は86名。立石氏の話しぶりからは、その一人ひとりへの愛情が伝わってくる。

そんな立石氏が家業を継ぐことを決めたのは、日本で初めて溶射施工の会社を創業した祖父や、創業地の京都から滋賀へと工場を移転させて成功を収めた父のように、「この会社で自分も何かを成し遂げたい」という思いを抱いたからだ。
「私が入社した当時は、業界自体が3K、4Kと言われていた時代。溶射自体は人々の生活を支える不可欠な技術であり、当時から当社の社風はアットホームで温かなものでしたが、社員の定着率は決して高くありませんでした。そこで当社でも働き方改革が必要と考え、早くから社員の働きがいを高めるためのさまざまな取り組みを推進してきたのです」。
そう話す立石氏が目指したのが、「社員の幸せと成長を追求する企業であり、『人を大切にする』大家族経営」だ。
女性の育児休暇はもちろんのこと、2017年には最短7日間の男性育児休暇制度も設け、全社員に取得を義務化。加えて、再雇用率100パーセントの定年後継続勤務制度、国家技能検定や黄綬褒賞の受賞支援、年1回の決算期には決算賞与、年10万円の誕生日手当やスーツ手当、全社員での海外への社員旅行など、社員のモチベーションアップと働きやすい環境の整備に力を注いできた。
さらに、社員の結婚記念日にはメッセージカードとギフト券を配偶者に、誕生日には社長と社員のツーショット写真を添えた手書きのメッセージカードを両親に送るなど、社員の家族にも寄り添い、まさに”大家族経営”を体現している。
こうした社員満足度を高める就業環境や福利厚生の充実を支えるのが、確かな技術力と経営戦略だ。溶射施工のあらゆるプロセスに対応できる設備を自社で擁する同社は、国内外3600社を超える幅広い業界の企業に技術とノウハウを提供。顧客の業界もその比重も、バラエティに富んでいるため不況に強い。また、時代に応じて出現する製品や技術に対して、新たな溶射加工方法の検討や新素材の開発などを自社で柔軟に行えるのも大きな強みだ。
一般にも開かれた新工場が
地域の新たなランドマークに
同社の大きな特徴であり強みとなっている、社員が高いモチベーションで働ける環境と、高度な溶射加工技術。それらを伝統として未来に繋ぐため、創業から90周年を迎えた2023年に「未来にツナグNEXT 50」プロジェクトが発足。来る100周年や次の50年を見据えた取り組みの一貫として、同年3月には「魅せる工場」をテーマにした新工場が誕生した。
溶射のオープンファクトリー

「魅せる工場」をテーマにした新工場について語る、代表取締役の立石氏。

この新工場では、小学生などの工場見学を想定したオープンファクトリーを実現。海外の工場に着想を得たスタイリッシュなサインやカラーリングは、働く社員たちの意識向上に加え、見学に来る子どもたちにも憧れを抱いていて欲しいという思いからだ。安全性と機能性を重視した溶射ブースは、特殊な大型溶射への対応も可能。jr草津線から見える工場裏の外壁には、甲賀忍者として知られる猿飛佐助の発祥地である地元への愛着を込めて、躍動的な忍者のイラストが描かれている。
「同プロジェクトでは現在、新たな本社社屋の建設も進めています。こちらは、全部署が集うワンフロアのオフィスから、ロッカールームなどを完備した社員用のフィットネスジムやダイニング、シアター形式の多目的ホールや世界初の溶射ミュージアムなどが入る、4階建ての社屋となる予定です」
多目的ホールと溶射ミュージアムは一般の人々にも解放し、同時に工場見学の受付もスタートするという。
「工場見学については、すでに社員の子どもたちを対象に「こどもさんかんび」を実施し、とても喜んでもらいました。ミュージアムでは、日本の機械遺産に認定された溶射装置や、私の祖父の代に製作された当時の貴重な映像などを展示し、日本の溶射技術や当社の歴史が、大人から小さなお子さんにまで伝わるような内容にしたいと考えています」
新工場と新社屋を通じて立石氏が目指すのは、この場所を同社のある滋賀県湖南市の新たなランドマークとすること。市内の小学校で配布される副教材で会社概要や溶射の仕事が紹介されるなど、同社は長きに渡り地域の人たちに愛されてきた。
「今後も社員たちと共に成長し続けながら、この場所で溶射技術の素晴らしさを多くの人たちに伝えていきたい。会社の成長といっても、一人ひとりの社員の顔が見える範囲の規模を守りながら、しっかりと利益を出して社員に還元できる経営を続けていきたいですね」
#Episode溶射のオープンファクトリー
INTERVIEW
立石豊
INTERVIEW
株式会社シンコーメタリコン 代表取締役 立石豊
1961年生まれ。京都府出身。大阪芸術大学映像計画学科卒業後、祖父が創業し、『溶射』の日本における先駆けとなった企業、シンコーメタリコンに入社。1994年、代表取締役就任。『人を大切にする経営』をモットーに社員の働き易い環境作りに注力し、『ホワイト企業大賞』等を受賞。
https://www.shinco-metalicon.co.jp

※ 本サイトに掲載している情報は取材時点のものです。


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